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The Angel Cradle.

飛び立つこともままならない。 座り込むことすら許されない。 僕らはいつも、不安定な足場の上に。

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「なぁー坂本サン、うちも慈善事業とちゃいますねん、そこはやっぱりちゃんと誠意ってもんを見せてもらわんと。なぁ?」
「せやなぁ、兄さんこれはちょっと酷いわぁ。こんなん僕ら持って帰られやしまへんやん」
…お前らはヤクザか。
思わず浮かんだ言葉を俺は涙と共に飲み込んだ。

長野が言ったとおり、光一は俺たちが遅めの昼飯を食い終わった頃、二時ちょっと前にやってきた。
数ヶ月前に紹介された研修中の新人、剛(つよし)を引き連れて。
光一は俺の担当になって約二年の某大手出版社編集部の人間だ。
フルネームは堂本光一、関西出で俺より二個下の26歳。
若手ながらやり手の編集者として社内ではなかなかの有名人らしい。
対する剛はこれまた苗字を堂本と言い、さらに関西出までもが光一と一緒だと言う25歳の青年である。
ちなみに聞くところによると二人は血縁関係でもなんでもなく全くの他人で、苗字が同じなのも関西出なのも偶然の産物らしい。
光一が切れ物のクールビューティーなら、剛はほわほわとしたある意味でのゆるさが特徴の小動物系。(本人はレッサーパンダだと豪語している)
見た目も中身も正反対な二人だがどうやら相性はいいらしく、ここ数ヶ月この二人のタッグに俺は一体何回泣かされた事か…いや、自業自得と言われてしまえばそれはもうおっしゃる通りなのだが。
「あ、あと一日!一日くれ!!そしたら絶対出来上がるから!!」
「ほんまか~?坂本くんの絶対は信用ならんからなー」
「そうやなぁ、先月も同じこと言うて結局一週間も待たされたしなぁ」
「いや、それはほんと、すんません」
年下相手にへこへこ頭を下げる俺…本当にカッコ悪いんですけど。
キッチンで二人にお茶を淹れている長野がくすくすと忍び笑いをもらすのを俺は聞き逃さない。
じろりとそちらに目をやれば、ますます笑いを濃くした長野がトレイの上にお茶をのせてキッチンから出てきた。
その足元にはやっぱり黒猫がまとわりついている。
「なんか、三人のやり取り見てるとコントみたいだよね。いっそのことデビューしちゃえば?」
二人の前に湯飲みを並べながらの長野の軽口。
一体どの口がそう言う事を言うんだ!!
が、俺の心中など考えもしない関西人二人は長野の悪ふざけに乗っかっていく。
「あぁ、それアリかもしれんわ長野くん。俺らならM-1狙えるんちゃうか?」
「んふふ、えぇなぁ。そしたら長野くん俺たちのマネージャーしたってや」
「あ、いいねぇ、それ面白そう」
「…お前ら、俺をからかって遊ぶな」
『え?』
…お前らはアイドルか!っつーくらいの輝かんばかりの笑顔で三人に微笑まれ、俺はひじょーに居た堪れない気分になりました。
「…原稿は明日までに絶対に上げます。だから勘弁して下さい」
「ま、しゃーないな。ほんならまた明日来るから、きちんと耳そろえておくように」
…だからお前はヤクザか。
一体何の回収をしに来てるんだか分からない光一の不敵な笑みと言葉に、俺はがくりと肩を落とした。

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そうそう、相棒の紹介ばかりで俺自身の自己紹介がまだだった。
俺の名前は坂本昌行、目下彼女募集中の独身28歳。
子供に嫌われる強面をしているが、決してもてないわけじゃないと言う言い訳を虚しいとは思いつつ一応しておこうと思う。
カレンダー上での休みなどとは全く関係のない生活をしている、一応作家と言う身分で、ついでに言えば専門はもっぱら児童文学である。
基本的には小学校中~高学年を対象にした本をちまちまと書いている。
最近では趣味で描いていた絵が編集の目に留まり、文章だけじゃなく挿絵も自分で描く様になった。
おかげさまで現在収入は割かし安定している。
このご時勢において、それは非常にありがたい事である。
「みゃあん」
「ん?」
正に猫なで声、とでも言うのか。
いきなり妙に甘えた鳴き声を上げた相棒は、テーブルの上からするりと降りて一目散に駆け出した。
何事かと思い後ろを振り向けば、あぁ、と俺は納得する。
「おかえり」
「ただいま~外すっごい寒いよ。風が強くて飛ばされそうになっちゃったよ」
冗談混じりにそう言いながらマフラーを解いているのは、買い物に出ていたもう一人の同居中の相棒(人間)、長野博である。
俺より一個下の27歳会社員、こちらも同じく独身。
いかにも優しげな風貌にしっくりとくる柔らかな微笑み(プラス左の目元に泣きぼくろ)、まぁるい声が特徴。
付き合いは中学時代からと言ういわゆる腐れ縁で、高校卒業後から訳合って同居をすることになり現在に至るのだが、その理由を説明すると長くなるので今の所は割愛させて頂く。
長野は着ていたコートを脱いでイスの背にかけると、足元にまとわりついている黒猫を抱き上げて暖を取るように腕の中に囲い込んだ。
「おー暖かい。お前日向ぼっこでもしてた?お日様の匂いがするよ」
「にゃぁん」
ごろごろと盛大に喉を鳴らして長野に甘えまくる相棒。
そう、この黒猫はやたらと長野になついていた。
自分を拾ってくれた人間だと分かっているからなのかなんなのか、とにかく長野の言う事ならばなんでもよく聞いた。
俺の言う事は…言わずもがなである。
「坂本くんはちゃんと仕事してた?」
「みゃみゃ」
「してなかったの?」
「みゃー」
完璧に成立しているように聞こえる一人と一匹の会話…が、問題はそこじゃない。
「…お前なぁ、猫に見張りなんか頼むんじゃねぇよ」
先ほどの猫パンチ。
こいつは編集部の回し者じゃなくて長野の回し者だったのか。
「だって坂本くん、目を離すとすぐにさぼろうとするんだもん。ねー?」
「みゃう」
26の男がだもんとか言うんじゃねぇー
つーかお前も応えるように鳴くんじゃねぇー
そもそもこの家に俺の味方はいないのかっ!!
「で、どこまで進んだ?」
「うっ!」
言うなりひょいとノートパソコンの画面を覗き込んだ長野は、それを見た途端、急にすぅっと目の色を変える。
うおっ!!怖っ!!
「…俺が出かけに見たのとほとんど変わってないように見えるけど?」
「す、すんませんっ!!」
顔は笑ってるのに目は笑ってない。
この長野の表情は俺が最も不得意とするもので、つい反射的に謝りの言葉を口にしてしまう。
な…情けない…
余りにも情けなさ過ぎるぞ俺!!
「知らないよ?これ今日が締め切りなんでしょ?今朝光一から電話あって昼過ぎに来ますって言ってたよ?」
「げっ!!マジかよ…」
「自業自得。さ、俺は昼ごはんでも作ろうかな。お前もお腹すいたよね?」
「みゃあ」
「…長野ぉ~」
「はいはい、ちゃんと坂本くんの分も作ってあげるから、さっさとそれ終わらせちゃいなさい」
呆れた顔を隠しもしないで(むしろ露骨に出して)そう言った長野に肩をつかまれ、くるりと体を元の方向に戻される。
…なんか俺、完全に駄目人間じゃねぇか?
自分の情けなさ加減に涙しそうになった俺に、猫の相棒は長野の腕の中でからかうようににゃあと鳴いた。
…ちくしょう。

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作家の傍らには猫。
どういうわけか、その光景はしっくりとくる。


昼を少し過ぎた、世間では休日と呼ばれるとある日。
窓ガラスから差し込む柔らかな陽光にうつらうつらと眠気を誘われていると、いつの間にか側に寄って来ていた同居中の相棒に無言のままそれを窘められた。
キーボードの上で止まった手に、ぺしり、と猫パンチ一発で。
「…お前は編集部の回し者か?」
恨みがましい目で見据えつつそんな事を言ってみても、相手は何処吹く風で涼しい顔をしている。
まぁそもそも、俺からしてみれば猫ってヤツは常に涼しい顔をしているようにしか見えないのだが。
言い忘れていたが、『同居中の相棒』とは憎らしいほどに艶やかな漆黒の毛並みを持つオスの黒猫のことである。
数ヶ月前、もう一人の同居中の相棒――こちらは人間である――が拾ってきた元野良猫だ。
その割には毛並みが良かったり、愛想が良かったり、更には躾もしっかりされていたりと、とても野良猫とは思えない部分が多々あったので、何処かから逃げてきたのではないかとも思ったのだが、首輪をしていないことから身元を割り出すものが何も無く、なんだかんだの末結局我が家で飼う事になったのだ。
動物は嫌いじゃないが、どちらかというと犬派の俺は、コイツを飼う事に余り乗り気ではなかった。
が、もう一人の相棒に強引に押し切られる形で渋々了承したと言うのが現状である。
念のため主張しておくと、一応――とつくのがなんとも情けないが――この家の家主は俺である。
「はぁ…分かったよ。ちゃんと手を動かしますっ!」
半ばヤケクソ気味にそう言って、俺はノートパソコンのキーボードを打つ手を再開させた。
その傍らで相棒は何処か満足げににゃあと鳴く。
…こいつ、やっぱり編集部の回し者なんじゃねぇか?
つい本気でそんなことを思ってしまった。

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「坂本くん長野くんおっは~♪♪♪」
「おはよう井ノ原(笑)」
「おっまえ朝からテンション高いなー(笑)」
「ん?だってほら、久しぶりのピーカン晴れじゃん?なんか妙にテンション上がっちゃってさ~♪あはあは♪」
「ウザさ三割り増しだな(笑)」
「だね(笑)」
「ちょっとそこ!ウザいとか言わない!!(笑)」
「あはは(笑)まぁでも確かにこのところ天気っていったら雨か曇りだったからね」
「あぁ、今月はほとんどそんな状態だったよな。せっかくの春だってのに」
「うん。おかげでなんとなく気分も沈むし、もうしばらく雨はいいよ(苦笑)」
「だな(笑)」
「うんうん。てなわけで今日のこの久しぶりの晴天を楽しもうぜぃ♪イエイ♪♪♪」
「…晴天は嬉しいけど、井ノ原のこのテンションは嬉しくないよな(笑)」
「右に同じく(笑)」
「ってちょっとぉ~!!(笑)」
『あはははは(笑)』


*****

無理矢理すぎるまとめ。(笑)

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でもこの雨ばかりは自分のせいではないはずだ、と降りしきる雨を見つめてひとりごちた。
4月に入ってからと言うもの、日々降ったりやんだりを繰り返している雨は今日も相変わらずで。
そのせいで最近散歩に連れ出せていない愛犬が不満顔でこちらを見ているけれど、こちらとしてはへらりとした愛想笑いを返すしかない。

洗濯物は室内干しだし、せっかく洗車した車はまた汚れてるし、愛犬は機嫌が悪いし。

なんだかなぁ、と思って頭をかく。
せめて愛犬のご機嫌取りだけでもしておくかと、仕方なく重い腰を上げて散歩を雨天決行することにした。

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