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The Angel Cradle.

飛び立つこともままならない。 座り込むことすら許されない。 僕らはいつも、不安定な足場の上に。

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「けーんちゃん♪今日もカワイイねぇー♪」
「・・・まぁ俺が可愛いのは当然として。岡田さぁ、最近のお前のそのキャラなんなの?」

楽屋の奥から聞こえてきた、可愛いのは当然なのかよ、と言う剛の言葉はとりあえず無視する方向で。
にこにこと言うよりはニヤニヤの方が合っているような気がする笑顔を浮かべた岡田に対し、俺は眉根をきゅっと寄せた。
なんだか良く分からないけど、最近のコイツは俺を愛でるのがブームらしく。
仕事中でもそれ以外でも、事ある毎にこうして俺を褒めて来る。
まぁ俺が可愛いのは自他共に認めるところだけれども。
同じメンバーの、しかも年下の岡田にこうもしょっちゅう言われると若干気持ち悪くなって来るわけで。
気付けば随分と間近に接近して来ていた岡田の顔の、その特徴的なデコをべしりと叩いてみたら、いでっ!と言う声が上がった。
「ちょっと、健くん。なんで叩くの」
「え?そこにデコがあったから?」
「そんな理由で叩かないでよ・・・」
叩かれたデコをさすりながら、ちょっぴり涙目になっている岡田はいつもの残念なV6の末っ子ちゃんだ。
そんなに強く叩いたつもりはなかったんだけど、結構いい音したもんな、今の。
ごめんごめん、とデコを撫でさすってやれば、涙をひっこめた岡田がにっこりと笑った。
「やっさしーなー健ちゃんはー♪」
「もーなんだよやめろよー」
「困ってる顔も可愛いーねー♪」
またまた楽屋の奥から剛の、ほんと岡田気持ち悪ぃな、と言う声とうひゃうひゃ笑いが聞こえてくる。
そりゃあ俺だってアイドルですから?
可愛いと言われるのはやぶさかではないんですけどもね。
ただやっぱり岡田に言われるのはちょっとなんか、なんと言うか・・・変なむず痒さがあるような気がして、なんとも言えない心持ちだ。
「お前さぁ、今年はその方向で行くつもりなの?」
「うん。ダメかな?」
「いや、そんなこと聞かれても・・・」
「あ、もちろん健くんのことは本当に可愛いと思ってるよ?」
「もーそれはいいってば」
真っ直ぐできらっきらした目で言われても、どんなリアクションを返すのが正解なのかさっぱり分からないんですけど・・・
そんな風にひたすら困惑するばかりの俺を見かねたのか、岡田はちょっと声のトーンを落として緩く首を傾げた。
「健くん、こういうのって嬉しくない?」
「え?」
「まぁ俺に可愛いって言われても嬉しくないか」
「えぇ?いや、それは・・・」
「嬉しいから困ってんじゃねーの?」
「えっ?」
いつの間にかこっちに近づいて来ていた剛が、全てお見通しだと言わんばかりの顔でそんなことを言った。
・・・なんだよ。
それじゃあ俺がすごい痛いヤツみたいじゃんか。
嬉しいなんて、そんなこと・・・
「健くん?」
・・・岡田が珍しく眉尻を下げて、困ったような顔なんかするから。
そうだ、そんな顔なんかするから。
剛のにやけ面はなるべく視界に入れないようにして。
俺は精一杯の仏頂面を作ってから、ぼそりとそれを口にした。
「・・・・・・うれしくなくはない」
・・・そう。
なんとも残念ながら。
ひっじょーに悔しいことに。
ワタクシ、嬉しくなくはないのです。
でもそれを認めてしまうのはちょっと恥ずかしすぎやしないかい?
一人そう内心で葛藤する俺の心を知ってか知らずか、
素直じゃねぇなぁと剛がうひゃうひゃ笑う。
ふぐぐ、と忸怩たる思いで臍を噛む俺に対し、当の岡田の反応と言えば。
「・・・そっかぁ」
あまりにもほにゃっとした、昔のリンゴほっぺちゃんを思い出すような、妙にカワイイ笑顔を浮かべたりなんかするもんだから。
なんだか今までの色々がどうでも良くなってきて、俺もつい、笑ってしまった。
「・・・ぷふふっ。お前さ、俺のこと可愛いって言うけど、俺からしてみればお前も充分カワイイの部類に入るんだからな?」
「え?俺が?」
俺のどこが可愛いの?ときょとんとした顔をする岡田は、外向きに作られたものじゃない、無防備な表情で。
俺はコイツのこういう顔が一番好きだなぁと思ったりするわけなのである。
そしてそれは多分、俺だけではないはずなわけで。
「なぁ、剛。岡田ってカワイイよな?」
「あーまぁ可愛いんじゃね?」
「えぇ?剛くんまで何?」
含み笑いの俺が投げ掛けた言葉に、剛はニヤリと笑ってそう返してくる。
思いがけず剛にまで可愛い認定をされてしまった岡田は、耳を赤くしてあわあわと狼狽えた。
どうだ、これでちょっとは俺の気持ちが分かっただろ?
「ほぉーんと岡田はカワイイよなー岡田は岡田だもんなーうりうりー」
「ぬぉ、ちょっと、健くん!」
「うひゃひゃひゃ」
俺はわしゃわしゃーっとムツゴロウさんばりに岡田の頭を撫でまくる。
慌てる岡田と、それを見て笑う剛。
うんうん、この感じこそ俺達だな。
そんな風に納得して、その満足感からついニコニコの笑顔を浮かべたら。
「・・・やっぱり健くんが一番可愛いと思うよ」
と、真顔の岡田に言われてしまったので。
俺はもう全てを受け入れる覚悟をして。
「ありがとよっ!」
と応え、にかっと笑ってやった。

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