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The Angel Cradle.

飛び立つこともままならない。 座り込むことすら許されない。 僕らはいつも、不安定な足場の上に。

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・朝の駅ホームにて、女子高生の会話。

「ねーねーちょっと!あの人すごい格好良くない!?」
「え?うわ、ほんとだ!ちょっとレベルちょー高くない!?」
「だよね!格好いいって言うか美しいって感じ?整いすぎてて近寄りがたいって言うか・・・」
「眺めてたい美形って感じ?」
「そーそー!!」

・そんな女子高生の熱い視線を受けているホームの王子様、岡田准一の脳内。
※顔は無表情です。

『明日は時刻表の発売日やったな。忘れんようにせな。そうそうもう春休みも目前やし、スペーシアのチケット買っとこ。久しぶりに逢いに行けるなぁ、スペーシアv』

・そんな光景を見守っていた駅員さんの会話。

「・・・俺あそこの温度差が手に取るように分かってすごい嫌なんだけど」
「安心しろ、俺もだ」

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■坂本昌行(35)
某鉄道会社社員、某路線某駅の駅務員。
勤続年数5年で長野とは同期。
その美声により駅構内のアナウンスに定評がある。
特別鉄ヲタではないが、前職である旅行添乗員時代に第1種時刻表検定1級を取得。
ゆえに岡田に懐かれている。

■長野博(35)
某鉄道会社社員、某路線某駅の駅務員。
勤続年数5年で坂本とは同期。
見た目は優しげだが腕っ節が強いのでラッシュ時には特に頼りになる。
一度駆け込み乗車ではさまれそうになった剛を助けてから懐かれている。
特技は苦情処理と酔っ払いの対処。

■井ノ原快彦(30)
某鉄道会社社員、某路線某駅の駅務員。(目標は運転士)
この秋に中途入社したばかりの新人でかなりの鉄ヲタ。
まだ不慣れなため、朝のラッシュ時に乗客に巻き込まれて電車に押し込められてしまうことがたまにある。
その度に長野に引っ張り出されてなんとか事なきを得ている。
毎朝絡んでくる高校生健は実は甥っ子。(姉の子)

■三宅健(17)
高校二年生。
井ノ原の姉の子で甥っ子。
毎朝叔父に絡むのが日課ゆえ、他の駅員さんともいつの間にか顔見知りに。
鉄道に興味は皆無だが、叔父に付き合っているうちに妙な知識が増えてしまっているのが最近の悩み。

■森田剛(17)
高校二年生。
寝坊の常習犯で駆け込み乗車をちょくちょくする。
以前ドアにはさまれそうになった時に助けてくれた駅員(長野)に憧れを抱いており、将来この仕事につくのもいいかなと思い始めている。
鉄道への興味は一般男子並み。

■岡田准一(16)
高校一年生。
ホームの王子様と密かに呼ばれているほどの美形だが、実は井ノ原に引けを取らないほどの鉄ヲタ。
時刻表とスペーシアをこよなく愛している。
ひょんなことから時刻表に詳しい坂本と知り合い、以来彼をものすごく尊敬している。

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今年の年末年始はみんな一緒じゃないんだよね、って。
そうつぶやく君の横顔がとても寂しげに見えたから。
君の事が大好きな僕たちは、全ての予定をキャンセルして。
驚く君の手を引いて、年明け間近の世界に車をかっ飛ばした。







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眼下にはコンクリートジャングル。
聳え立つビル群。
排気にまみれた街に輝きは見えない。
希望も見えない。
夕焼けすら赤黒く禍々しく、
そこには美しさの欠片もない。


「う~ん、なんつーかこう、魅力のない世界だと思わねぇ?」
小高い丘から見下ろした風景を不満そうにそう評価して、初夏を少し過ぎた季節には不相応な黒いロングコートを着込んだ、細い目が特徴的な男は後ろを振り返った。
当然のように同意が返ってくるものと思い込んでいた彼はしかし、振り向いた先の二人が微笑みを浮かべて自分を見つめていることに気づいてバツの悪そうな顔になって唇を尖らせる。
「なんだよ二人して楽しそうな顔しちゃってさぁ」
「うーんまぁよっちゃんの嫌そうな顔見てたら逆に楽しくなってきたかなぁ」
「お前見てるとほんと飽きないよなぁ」
「あんたら失礼だよな~ほんと」
細目の男と同じく黒のロングコートを纏った二人の男は、むくれる男を見てますますその微笑みを色濃くした。
二人の男のうちの片方、夕焼けの赤が良く映える色白い肌をした男は独特のまあるい声で細目の男をからかうようにその目じりを引っ張る。
「よっちゃんの目が細すぎてちゃんと世界を映せてないんじゃない?」
「いでっ!いででっ!!ちょっとあんた引っ張りすぎだってソレ!!」
「ぷっ、はははは!!不細工だな~井ノ原!!」
「いででっ!!ちょっとそこ!!不細工とか言わない!!傷つくでしょぉ!!」
もう一人の男――眼光鋭く精悍な顔つきをした、三人の中では一番年長に見える――は、腹を抱えるほどの大笑いをした後、ようやく開放してもらって目じりをさすっている男に複雑な表情を投げかけた。
「世界は、魅力に満ちてるよ。今も昔も、な」
紡ぎ出された言葉の意味は深い。
そしてきっと今ここに居る三人だけが、その深さの理由を知っている。

沈み行くこの世界。

「・・・あ、見てみなよ。あれは結構キレイじゃない?」
「ん?あぁ・・・」
「あー本当だ」
落ちた沈黙に、不意に色白の男が指差したのは、青と赤のグラデーションに染まる空に浮かぶ、一粒の金平糖のような星。
正確に言えばそれは金星。
宵闇に浮かぶ宵の明星だ。
「しょうがないよ、俺たちはどう足掻いても元は人間だからね」
三人揃って見上げた宵の明星は一際強い光を放っていて。
「名前に固執してるのがいい証拠、か」
ほんの少し、眼下の世界が浄化されたように映った。
「・・・こんな世界、見捨てることだって出来るのにねぇ」
可能性はまだ残されているのかもしれない。
少なくともまだ、この光はこの世界を見捨ててはいない。

ヴィーナスに見守られた、この世界。

「さぁ、いつまでもこうしていたって仕方がないよ。どっちにするのか、早く決めないと」
「そうだな。早いとこ判断してくれないか、井ノ原」
「えぇ!?俺が決めるわけ!?」
「何言ってんの。当たり前だろ?」
「お前、自分をなんだと思ってるんだ?お前は唯一神に意見することを許された存在・・・俺たち智天使(Cherubim)とは違う」
年長の男はびしっと指を指して。
「熾天使(Seraphim)なんだぞ?」
にっと笑った。
「・・・分かったよ。決めりゃいいんだろ決めりゃ」
渋々、と言った様子で頷いてから、細目の男はよしっ、と気合も新たにぱちんと両頬を叩く。
それから不敵な笑みを浮かべて、遥か天空のヴィーナスを仰いだ。
「助けてやろうじゃんよ。女神様が見守ってるって言うんなら、まだこの世界も捨てたもんじゃないんだろ?」
「井ノ原にしては上等な答えじゃない?」
「よし。そうと決まったらVesper(宵の明星)がLucifer(明けの明星)になる前に出発するぞ」
『了解』

一人の男の声に二人が頷き、三人は共に大地を蹴る。
そのまま彼らの体は落下することなくふわりと宙に浮き、その背には真っ白な翼が現れた。
鳥のようにしなやかに、羽音を響かせて羽ばたく大きな翼。
そう、彼らは人ではない。
真っ白き心で神に仕える穢れなき天界の使者、天使なのだ。

「決めたんだ、守るって」

太陽が落ち、世界が赤から青に染まり変わる。
眼下には闇色に染まった世界。
今はただ、暗く沈んでしまっているけれど。
『かつての彼等』が愛した、何よりも愛しい場所。

「もうあそこは、俺たちの世界じゃないけどさ」
「でも、記憶はちゃんと俺たちの中に残ってるから」

だから。



守りたいのは、
ヴィーナスに見守られた、この世界。


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「ねぇ、12年経っても変わらないものってなんだと思う?」
「えーいきなりそう言われてもなぁ~…あ、強いて言うなればトニセンとカミセンの身長差とかどうよ?(笑)」
「見事に伸びなかったよなーお前ら(しみじみ)」
「ちょっと!失言だよそれぇ!!」
「そーだそーだ!」
「まぁ確かに伸びてないは伸びてないけども…(笑)」
「そこ!納得すんなっての!(笑)」
「まぁまぁ。でもほら、健ちゃんそこはあれよ」
「なに?」
「あともう10年もしたら今度は坂本くんの身長が縮み始めるから大丈夫っv(笑)」
「ってオイ!!10年じゃ縮まねぇよ!!(怒)」
「あははは。そうきたか~(笑)」
「うひゃひゃひゃ(笑)」
「んふふ…(笑)」
「あーなるほどね!そう言うパターンもあるんだ!」
「パターンってお前なぁ…(脱力)」
「じゃあ坂本くん、俺たちのためにも長生きして(身長を縮めて)ね♪」
「…こんなに喜べねぇ励ましもないよな(涙)」

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*AVIARY*

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