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The Angel Cradle.

飛び立つこともままならない。 座り込むことすら許されない。 僕らはいつも、不安定な足場の上に。

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もうこいつから見上げられる事はないんだな、と思ったらちょっとした寂しさを感じた。
あの日のことは今でも良く覚えてる。

「井ノ原さぁ」
「ん?なに?」
「俺がお前の事チビちゃんって呼ばなくなった…と言うか呼べなくなったのっていつの事だったか覚えてる?」
「え?んんー中学だか高校くらいだった覚えはあるけど…それがどうかした?」
「ん?別に。ただ懐かしいなぁと思って」
「何よ何よ長野く~ん、まだ昔を思い出して浸る年齢じゃないっしょ」

笑うと無くなる目は今も変わらず。
人を惹きつけてやまない笑顔や人柄も、あの頃と何一つ変わってはいないのだけれど。
たった一つ。
当然と言えば当然の変化にちょっとした寂しさを感じるのは自分が歳を取った証拠だろうか、なんてつい苦笑する。

「あ、チビちゃんって言えばさ、俺長野くんにチビちゃんじゃなくて井ノ原って呼ばれるようになった時、成長を認められたのは嬉しかったけど、ちょっと寂しくもあったな~」
「え?」
「ほら、甘ったれな俺としましては、まだまだチビちゃんでいたい気持ちもあったわけよ」

今だから言える話だけどね、と言って浮かべられたのは照れくさそうな笑顔。
そこに『チビちゃん』だった頃の面影を見て、つい緩んだ口元を苦笑にして隠す。
どうやら、感じた寂しさはお互い様だったらしい。
…なんだかそれって、ほんと。

「…なんかさぁ、嫌だなぁ俺」
「へ?何が?」
「自分が。あまりにも親の心境になりすぎてて、自分でも驚くよ。こんなに大きい子供持った覚えはないんだけどなぁ」
「はい?」

だから俺と坂本くんは結婚出来ないのかもしれない、なんてちょっと本気で思ってみたりして。
でもまぁ…それも喜ばしきかな?
俺たちの人生は井ノ原を始め、剛、健、岡田…この愛すべきメンバーたちを中心に回っている。
その事実は多分、きっと。
悪くはない。

「そんなわけで、俺と坂本くんの老後は頼んだよ、井ノ原!」
「へっ!?ってそんなわけの意味が全く分からないんですけどっ?!」
「カミセンもいることだし、俺たちの将来は安泰だな♪」
「っておーい長野く~ん?」

頭は大丈夫か~?と失礼な言葉を投げかけてくる井ノ原は無視の方向で。
俺は音がしそうなほどのにっこり笑顔を意識して浮かべ、何故か途端に固まった井ノ原に向かって言ってやった。

「頼りにしてるよ、元チビちゃん」

今も昔も変わらずにね。

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「あ、そうだ井ノ原くん」
「なんだい剛ちゃん藪からスティックにっ!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ただ言いたいだけなんだろ?」
「・・・うん」

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「ねぇねぇ長野くん長野くん」
「ん?どうした?」
「あのさ、場所は六本木界隈、価格はリーズナブル、部位はカルビ、サイドメニューは石焼ビビンバ、ついでにキムチもおいしい焼肉屋さん教えて!」
「ってなんだか随分細かいリクエストだなぁ」
「ほら、だってさ、検索ワードは多い方がヒットするでしょ?」
「・・・俺は検索エンジンかい」

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モノトーンの景色の中にこぼれる、ひとひらの薄紅。
目の前に届いたそれを、指先で掴んだ。

あまりに儚げな感触に目を細める。
すると柔らかな風がさらに数枚の薄紅を運んで。

そして、不意に沈黙した。

彩りの無い世界の外へ目を向ければ、薄紅を纏った大木が悠然とその姿を現している。
それに、男が一人。


「覚えてる?」


柔らかな日差しの中で、浮かべられた笑みは淡い。
まるで泡沫のような光景の中。
穏やかな声が、ただ甘やかな囁きのような余韻を残して。



あぁ、今年も。
この季節が来た。

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強がりなのは、多分みんなお互い様だ。

「おかだー」

自分たちの仕事が仕事だから、必然と言えばそうなんだけど。

「何?」

そうは言っても人間なんだから、どんなに頑張っても心が折れることはやっぱりあるわけで。

「別に、何でもない」
「はい?」

だから、俺は。

「おかだー」
「…何?」
「なんでもなーい」
「……なんやねん一体」
「えへ☆」

そんなのも無駄じゃないと思ってるから。
お前が笑ってくれるまで、何度だって繰り返す。

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