The Angel Cradle.
飛び立つこともままならない。 座り込むことすら許されない。 僕らはいつも、不安定な足場の上に。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
私たちが暮らす石造り風のアパルトメントは、日本で一般的に言うアパートとは少々作りが異なる。
まず玄関扉を開くと、高い天井に豪奢なシャンデリアが輝くエントランスホールがあり、その中央には二階へと続く大階段がある。
一階にはホール向かって右手にダイニングキッチン、左手にゲストルームがあり、それらは全て土足を許されたスペースの為、私は汚れた足でも気にせず闊歩することが出来た。
それは年中無休で裸足の猫にとってはとてもありがたい配慮である。
二階には坂本昌行と長野博の部屋がそれぞれと、バス・トイレなどの共用スペースがある。
ちなみに二人の部屋はさすがに土足厳禁であり、どちらかの部屋にお邪魔する場合、私はバスルームで体を洗われる羽目になるのだが、しかし。
お恥ずかしながら私も御多分に洩れず水が大の苦手であるがゆえ、毎度大暴れしては二人を困らせているわけで……うむ。
反省はしているのである。
一応は。
うむ。
と、まぁ詰まるところ要するに、我が家は外観はアパルトメント風の一軒家と言った方が良いだろう。
ゆえに男三人、もとい男二人とオス一匹のルームシェアなのである。
それは長らく野良として生きて来た私にとって、十分すぎるほどに恵まれた環境である。
さて、それでは話を元に戻そう。
「ただいま。ひと段落したから昼飯休憩にな。なぁセッテ」
「にゃう」
「おっ、新作の開発状況はいかがですか、料理長殿」
「まぁぼちぼちだな」
やや芝居がかった長野博の問いかけに、口角を上げた坂本昌行は実に不敵な笑みを浮かべて見せる。
つまりはその言葉とは裏腹に、成果は上々と言うわけだ。
それらの話を鑑みるに、どうやら彼は貴重な休日を返上して新作メニューの開発に着手していたらしい。
厨房から聞こえて来た上機嫌な鼻歌は、新作の出来に満足した彼の心の現れだったようだ。
「それはそれは結構な事で」
「そうだ、お前時間あるなら後で味見てくれないか?」
「Certo!(もちろん!)時間なんていくらでも作るよ!」
美味しいものに目が無い我らがパドローネは、子供のように目をキラキラとさせて首を縦に振る。
その反応に笑った坂本昌行は、でもまずは昼飯だな、と言い置くと私を長野博に引き渡し、キッチンの方へと向かって行った。
さて、今日の昼食はなんだろうかと私が考えていると、同じことを考えていたらしい長野博が、私を抱え直しながら「今日のお昼ご飯はなんだろうね、セッテ」と実に嬉しそうに口にする。
それはつまり、自分も御相伴に与るつもり満々でいる、と言う事だ。
しかも別段それを坂本昌行に告げたわけでもないのに、である。
けれども坂本昌行は多分、当たり前のように長野博の分の昼食も用意するのだろう。
何故かと言えば、それが彼らの日常であるからだ。
「ちょっと覗いてみようか、セッテ」
昼食が出来上がるのが待ちきれないのか、そう言った長野博は私を抱えたままキッチンの方へと歩き出した。
否やも無いので私はひとつにゃあと鳴いて同意を示してみる。
すると彼は小さく笑って、私の頭を優しく撫でるのだった。
******
日記(2014/07/31)掲載文を収納。
まず玄関扉を開くと、高い天井に豪奢なシャンデリアが輝くエントランスホールがあり、その中央には二階へと続く大階段がある。
一階にはホール向かって右手にダイニングキッチン、左手にゲストルームがあり、それらは全て土足を許されたスペースの為、私は汚れた足でも気にせず闊歩することが出来た。
それは年中無休で裸足の猫にとってはとてもありがたい配慮である。
二階には坂本昌行と長野博の部屋がそれぞれと、バス・トイレなどの共用スペースがある。
ちなみに二人の部屋はさすがに土足厳禁であり、どちらかの部屋にお邪魔する場合、私はバスルームで体を洗われる羽目になるのだが、しかし。
お恥ずかしながら私も御多分に洩れず水が大の苦手であるがゆえ、毎度大暴れしては二人を困らせているわけで……うむ。
反省はしているのである。
一応は。
うむ。
と、まぁ詰まるところ要するに、我が家は外観はアパルトメント風の一軒家と言った方が良いだろう。
ゆえに男三人、もとい男二人とオス一匹のルームシェアなのである。
それは長らく野良として生きて来た私にとって、十分すぎるほどに恵まれた環境である。
さて、それでは話を元に戻そう。
「ただいま。ひと段落したから昼飯休憩にな。なぁセッテ」
「にゃう」
「おっ、新作の開発状況はいかがですか、料理長殿」
「まぁぼちぼちだな」
やや芝居がかった長野博の問いかけに、口角を上げた坂本昌行は実に不敵な笑みを浮かべて見せる。
つまりはその言葉とは裏腹に、成果は上々と言うわけだ。
それらの話を鑑みるに、どうやら彼は貴重な休日を返上して新作メニューの開発に着手していたらしい。
厨房から聞こえて来た上機嫌な鼻歌は、新作の出来に満足した彼の心の現れだったようだ。
「それはそれは結構な事で」
「そうだ、お前時間あるなら後で味見てくれないか?」
「Certo!(もちろん!)時間なんていくらでも作るよ!」
美味しいものに目が無い我らがパドローネは、子供のように目をキラキラとさせて首を縦に振る。
その反応に笑った坂本昌行は、でもまずは昼飯だな、と言い置くと私を長野博に引き渡し、キッチンの方へと向かって行った。
さて、今日の昼食はなんだろうかと私が考えていると、同じことを考えていたらしい長野博が、私を抱え直しながら「今日のお昼ご飯はなんだろうね、セッテ」と実に嬉しそうに口にする。
それはつまり、自分も御相伴に与るつもり満々でいる、と言う事だ。
しかも別段それを坂本昌行に告げたわけでもないのに、である。
けれども坂本昌行は多分、当たり前のように長野博の分の昼食も用意するのだろう。
何故かと言えば、それが彼らの日常であるからだ。
「ちょっと覗いてみようか、セッテ」
昼食が出来上がるのが待ちきれないのか、そう言った長野博は私を抱えたままキッチンの方へと歩き出した。
否やも無いので私はひとつにゃあと鳴いて同意を示してみる。
すると彼は小さく笑って、私の頭を優しく撫でるのだった。
******
日記(2014/07/31)掲載文を収納。
PR