The Angel Cradle.
飛び立つこともままならない。 座り込むことすら許されない。 僕らはいつも、不安定な足場の上に。
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「おーかーだ~お前まぁーた木彫りなんかやってんのかよ」
「相変わらず変に器用だよねーお前」
「ゴウくん、ケンくん」
長野家お屋敷の裏庭にて。
切り株に腰掛けせっせと趣味の日曜大工(と言う名の木彫り)を行っていたバトラー見習い(現フットマン)の岡田准一は、近付いてくるきゃいきゃいとした声にその端正な顔を上げた。
うららかな春の日の昼下がり。
暖かな日差しの中を弾むようにやってくる二つの毛玉は、岡田がその名を呼んだ通り、彼の主人である長野伯爵が片手間で始めた黒魔術で召喚した魔獣、ゴウとケンである。
ぱっと見ウサギにしか見えない二匹は本人たち曰わく、強大な力を秘めた魔獣だそうで、赤いスカーフを巻いた目つきが悪いゴウの方は炎と雷を、青いスカーフを巻いた八の字眉毛なケンの方は水と氷を自由自在に操る事が出来るらしい。
一度出入りの庭師である井ノ原がその力によって散々な目に遭ったのを目撃したことがあるだけに、穏健派(と言う名のマイペース)の岡田としては、主人の長野に並んで出来るだけ怒らせたくない相手である。(ちなみに直属の上司である坂本にはあまりに怒られ過ぎてすっかり怒られ慣れてしまった彼である)
「今日は何作ってんだ?」
「見せて見せて♪」
元気な毛玉×2はととんと軽く岡田の両肩に駆け上ると、そこからじいっと彼の手元を覗き込んだ。
結局のところ、何だかんだ言っても彼らは岡田が器用に作り出す木彫りの作品に興味津々なのだ。
美形の見習いバトラーはくすりと笑って、手の中の物を二匹の目線まで上げて見せるとこう問いかけた。
「はい。これは何でしょう?」
「えぇ?」
「ってなんだよいきなり」
問いかけられた二匹は難しい顔になって、岡田が掲げた小さな木片をじっと見つめた。
彼の両手には同じサイズの二つの木片がある。
まるでひょうたんのような二つの丸みからなるそれはまだ作りかけで、はっきりとした形が彫り出されてはいなかった。
故にこれでは何を作ろうとしているのか皆目見当がつかない。
二匹は口先を尖らせて不満を口にした。
「こんな作りかけじゃ分かんねぇよ」
「そーだよ!ヒントはないわけ?」
肩の上でじれた二匹がぴょんぴょこと跳ねる。
ふわふわの毛が耳を掠めるくすぐったさにんふふと笑いながら、岡田はうーんと首を軽く後ろに傾けた。
「ヒント…と言うか答えはすぐそばにあるよ」
「「すぐそば?」」
「うん」
意味が分からずきょとんとした顔の二匹に岡田は楽しそうな笑みを向けると、二つの木片を左手の手のひらに並べて乗せた。
「確かにまだ作り途中だけど、ほら、ここら辺なんかはもうちゃんと形になってるし」
そう言って岡田が右手の指先で撫でたのは、丸みからにょにょっと伸びる二本のツノのようなもの。
それを見た二匹は途端にはっとした表情をして、全く同時に顔を見合わせた。
「ねぇねぇこれってもしかしてさ!」
「だよな!絶対そうだよな!」
双子だからこそ成せるワザか、主語の無い会話を成立させて頷き合う二匹は、両サイドからパッと岡田を見ると、つぶらな瞳をキラキラとさせて言った。
「「俺たち!?」」
「大正解」
にっこりと笑って岡田が頷く。
その答えに二匹はぱあっと顔を輝かせて興奮気味にまくし立てた。
「よっしゃあ!だよな!絶対そうだと思ったし!」
「まるっとしてるトコとかこの長い耳とかカンペキ俺たちだもんねっ!」
確かに分かってみればひょうたんのような形はウサギの頭と胴で、その頭から伸びている二つの角はウサギの長い耳のそれだ。
「出来上がったらゴウくんとケンくんにプレゼントするから、大事にしてな?」
ちゃんとスカーフも付けるからな、とお国言葉の訛りを覗かせてふにゃりと笑う岡田に、二匹はこれ以上ない嬉しそうな顔をして大きく頷いたのだった。
そんな風に穏やかな午後のひと時を、木陰で震えながら見守る(?)男が一人。
「可愛い…!すこぶる可愛い…!」
美男子と小動物が戯れる姿に今にも鼻血を吹き出しそうな勢いの細目の庭師がいたとかなんとか。
**********
無邪気な小動物の剛健と戯れる岡田さんと言うのが書いてみたくて、夏。(何)
主役の話よりもスピンオフ(笑)が先に出来るとはどういうことなのか。
「相変わらず変に器用だよねーお前」
「ゴウくん、ケンくん」
長野家お屋敷の裏庭にて。
切り株に腰掛けせっせと趣味の日曜大工(と言う名の木彫り)を行っていたバトラー見習い(現フットマン)の岡田准一は、近付いてくるきゃいきゃいとした声にその端正な顔を上げた。
うららかな春の日の昼下がり。
暖かな日差しの中を弾むようにやってくる二つの毛玉は、岡田がその名を呼んだ通り、彼の主人である長野伯爵が片手間で始めた黒魔術で召喚した魔獣、ゴウとケンである。
ぱっと見ウサギにしか見えない二匹は本人たち曰わく、強大な力を秘めた魔獣だそうで、赤いスカーフを巻いた目つきが悪いゴウの方は炎と雷を、青いスカーフを巻いた八の字眉毛なケンの方は水と氷を自由自在に操る事が出来るらしい。
一度出入りの庭師である井ノ原がその力によって散々な目に遭ったのを目撃したことがあるだけに、穏健派(と言う名のマイペース)の岡田としては、主人の長野に並んで出来るだけ怒らせたくない相手である。(ちなみに直属の上司である坂本にはあまりに怒られ過ぎてすっかり怒られ慣れてしまった彼である)
「今日は何作ってんだ?」
「見せて見せて♪」
元気な毛玉×2はととんと軽く岡田の両肩に駆け上ると、そこからじいっと彼の手元を覗き込んだ。
結局のところ、何だかんだ言っても彼らは岡田が器用に作り出す木彫りの作品に興味津々なのだ。
美形の見習いバトラーはくすりと笑って、手の中の物を二匹の目線まで上げて見せるとこう問いかけた。
「はい。これは何でしょう?」
「えぇ?」
「ってなんだよいきなり」
問いかけられた二匹は難しい顔になって、岡田が掲げた小さな木片をじっと見つめた。
彼の両手には同じサイズの二つの木片がある。
まるでひょうたんのような二つの丸みからなるそれはまだ作りかけで、はっきりとした形が彫り出されてはいなかった。
故にこれでは何を作ろうとしているのか皆目見当がつかない。
二匹は口先を尖らせて不満を口にした。
「こんな作りかけじゃ分かんねぇよ」
「そーだよ!ヒントはないわけ?」
肩の上でじれた二匹がぴょんぴょこと跳ねる。
ふわふわの毛が耳を掠めるくすぐったさにんふふと笑いながら、岡田はうーんと首を軽く後ろに傾けた。
「ヒント…と言うか答えはすぐそばにあるよ」
「「すぐそば?」」
「うん」
意味が分からずきょとんとした顔の二匹に岡田は楽しそうな笑みを向けると、二つの木片を左手の手のひらに並べて乗せた。
「確かにまだ作り途中だけど、ほら、ここら辺なんかはもうちゃんと形になってるし」
そう言って岡田が右手の指先で撫でたのは、丸みからにょにょっと伸びる二本のツノのようなもの。
それを見た二匹は途端にはっとした表情をして、全く同時に顔を見合わせた。
「ねぇねぇこれってもしかしてさ!」
「だよな!絶対そうだよな!」
双子だからこそ成せるワザか、主語の無い会話を成立させて頷き合う二匹は、両サイドからパッと岡田を見ると、つぶらな瞳をキラキラとさせて言った。
「「俺たち!?」」
「大正解」
にっこりと笑って岡田が頷く。
その答えに二匹はぱあっと顔を輝かせて興奮気味にまくし立てた。
「よっしゃあ!だよな!絶対そうだと思ったし!」
「まるっとしてるトコとかこの長い耳とかカンペキ俺たちだもんねっ!」
確かに分かってみればひょうたんのような形はウサギの頭と胴で、その頭から伸びている二つの角はウサギの長い耳のそれだ。
「出来上がったらゴウくんとケンくんにプレゼントするから、大事にしてな?」
ちゃんとスカーフも付けるからな、とお国言葉の訛りを覗かせてふにゃりと笑う岡田に、二匹はこれ以上ない嬉しそうな顔をして大きく頷いたのだった。
そんな風に穏やかな午後のひと時を、木陰で震えながら見守る(?)男が一人。
「可愛い…!すこぶる可愛い…!」
美男子と小動物が戯れる姿に今にも鼻血を吹き出しそうな勢いの細目の庭師がいたとかなんとか。
**********
無邪気な小動物の剛健と戯れる岡田さんと言うのが書いてみたくて、夏。(何)
主役の話よりもスピンオフ(笑)が先に出来るとはどういうことなのか。
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