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The Angel Cradle.

飛び立つこともままならない。 座り込むことすら許されない。 僕らはいつも、不安定な足場の上に。

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11月も後半に差し掛かかって、朝晩の冷え込みはぐっと強くなり、街が電飾の彩りに染まり始める頃。
井ノ原快彦は三宅健をお供に、人で溢れる繁華街でのお忍びショッピングを敢行していた。
ついこの間ハロウィンで騒いでいた街は、あっと言う間にクリスマス一色へと変化を遂げており、その素早い身のこなしにはただただ苦笑するしかない。
それでも年末に近づくこの時期の、世界全体がどこかそわそわとし始めているようなこの空気は、井ノ原とて嫌いではなかった。
華やかなイルミネーションに、クリスマスカラーのショーウィンドウ。
多種多様なクリスマスツリーに、街中に流れる定番のクリスマスソング。
子供の頃から染み付いたクリスマスと言う楽しいイベントの習慣は、三十をとうに過ぎた今でも変わらずに残り、現にメンバーに渡すクリスマスプレゼントを買うべく、貴重な空き時間を今現在買い物に費やしているのだから他人を笑えないところである。
「うっわ、ちょーさむいしっ!!」
「おー大分冷え込んできたなぁ」
店を出るなりそう声を上げた健に井ノ原も同調して頷く。
確かに夕方になって日が落ちたせいか、外の空気は店に入る前よりもずっと冷え込んでいた。
それこそ会話をするだけで白い息が見えるくらいで、これはもう完全に冬だなぁと思いながら何気なく健に目をやると首もとの開いた服が目に入ったので、井ノ原は自分のカバンからマフラーを取り出して言った。
「健ちゃんマフラー貸そうか?」
「あ、貸して貸して!首周りちょーさむいっ!!」
ややオーバーなくらいに身をすくめて騒ぐ健に井ノ原は自分のマフラーを渡してやる。
すると健は得意の上目遣いで「巻いてっ」と可愛いおねだり。
・・・三十路一歩手前の男にそんな可愛いおねだりをされても微妙な気分になるだけではあるが、しかし相手はあの三宅健である。
「しょーがねぇなぁ」と口では言いつつも、にやにやと笑いながら井ノ原はおねだりされるがまま健にマフラーを巻いてやった。
「・・・はい、完成!」
「ありがと♪あったけー♪」
たっぷりとしたマフラーをぐるぐると巻いてやった結果、マフラーに健が埋もれているような状態になってはいるが、それがまた可愛いんだよなぁなんて思ってみる。
この子本当に三十歳になれるのかしら?と彼を知る誰もが思う疑問を同じく頭に浮かべながら井ノ原は苦笑した。
「健も来年には三十路かー」
「確かに三十路にはなるけど急に何?」
「ん?いや、健ちゃんはいつまでも可愛いなぁと思ってね?」
「そりゃそーでしょ。だって俺アイドルだもん」
えっへんと胸を張る勢いで、さも当然と言い放つ健に、井ノ原が返せる言葉と言えば「そりゃそうだ」の一言しかない。
現に三十をとっくに過ぎた自分ですらアイドルを名乗れる身分なのである。(まぁ井ノ原が可愛いかどうかは置いておくとして)
時代は変わったな、なんて思ってちょっと遠い目などをしてみる井ノ原である。
「ねーねー井ノ原くん」
「ん?あ、あぁ、何よ健ちゃん」
服のすそをぴこぴこと引っ張って、可愛いおめめの上目遣い。
健お得意の甘えん坊モードである。
「俺、今日肉食べたい気分なんだけどっ」
「・・・・・」
当然アナタは今日も財布を持ってはいないんですよね?
問いかけの言葉をぐっと飲み込んで、井ノ原は苦笑いのままで答えた。
「仰せのままに」


**********

発掘品。ゆえに年齢設定が大分前。(笑)
ただマフラーに埋もれる三宅さんが書きたかっただけだと思われます。(笑)

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