The Angel Cradle.
飛び立つこともままならない。 座り込むことすら許されない。 僕らはいつも、不安定な足場の上に。
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年甲斐も無く、長野と大人げないケンカをしてしまった。
すでにその原因すら思い出せない程度のものなのだから、本当に大人げないと我ながら思う。
盛大な口げんかの後、お互いが無言になってからもう随分と経つ。
長野は仕事部屋に籠もってしまい、一人残された部屋に落ちるのは重苦しい雰囲気だ。
それでもこの部屋に居座り続ける俺も俺だろうか。
けれども今更部屋を出て行くつもりにもなれない。
そもそも俺はもう大して腹を立ててはいないのだ。
今はただ、長野の機嫌が直るのを待つばかり・・・と言ったところだ。
寝転がりなれたソファに身を沈め、うとうとと舟をこぎ始めた頃。
いつの間にかやってきた長野が、やはり無言のままソファの前にあるテーブルにすっかり俺専用になってしまっている飾り気のない真っ白なマグカップをどん、とわざとらしく音を立てて置いた。
どうやらコーヒーを淹れたらしい。
それを置くと長野はさっさと仕事部屋へと戻って行ってしまう。
その流れを見る限り、機嫌は現在進行形で斜めのようだが・・・
「・・・ガキか、アイツは」
テーブルの上に置かれたマグカップを持って、ついそう声に出して呟いてしまった。
いつもなら猫舌の俺のために、長野は冷めかけのコーヒーを出してくれる。
ところが今、テーブルに置かれたマグカップからは、その熱さをこれでもかと主張しているような湯気がほかほかと立ち昇っている。
・・・なんとも子供のような嫌がらせである。
しかしこれが大した嫌がらせにならない事を、果たして本人は分かってやっているのだろうか。
何せ、熱々のコーヒーはしばらく待てば冷めるのだ。
本気でケンカをしているつもりならば、このコーヒーすら出さなければいいのに。
むしろ俺をこの部屋から追い出してしまえばいいのに。
全くもって、長野は不可解だ。
けれどこれだから、この男とは長く友人関係が続いているのだとも思う。
・・・仕方がない。
そろそろ、折れてやろうか。
「なぁ、いいかげん仲直りしようぜ、作家先生」
仕事部屋の扉を開けて、口元に笑みを浮かべながらそう投げかければ。
「・・・学者先生が謝るんだったらね」
ばつの悪そうな顔をした長野が拗ねたような声でそう答えを返してきたので、俺はつい両手を挙げて降参のポーズをしてしまった。
**********
以前第二で書いた作家アリスの二次創作を名前だけツートップに変えてみた。(笑)
そしたらあまりにハマったので驚いたって言う話です。(笑)
あ、唯一アリス=博さんのセリフは標準語に修正。
メッセージを下さった某方に捧げたい。(希望か・笑)
すでにその原因すら思い出せない程度のものなのだから、本当に大人げないと我ながら思う。
盛大な口げんかの後、お互いが無言になってからもう随分と経つ。
長野は仕事部屋に籠もってしまい、一人残された部屋に落ちるのは重苦しい雰囲気だ。
それでもこの部屋に居座り続ける俺も俺だろうか。
けれども今更部屋を出て行くつもりにもなれない。
そもそも俺はもう大して腹を立ててはいないのだ。
今はただ、長野の機嫌が直るのを待つばかり・・・と言ったところだ。
寝転がりなれたソファに身を沈め、うとうとと舟をこぎ始めた頃。
いつの間にかやってきた長野が、やはり無言のままソファの前にあるテーブルにすっかり俺専用になってしまっている飾り気のない真っ白なマグカップをどん、とわざとらしく音を立てて置いた。
どうやらコーヒーを淹れたらしい。
それを置くと長野はさっさと仕事部屋へと戻って行ってしまう。
その流れを見る限り、機嫌は現在進行形で斜めのようだが・・・
「・・・ガキか、アイツは」
テーブルの上に置かれたマグカップを持って、ついそう声に出して呟いてしまった。
いつもなら猫舌の俺のために、長野は冷めかけのコーヒーを出してくれる。
ところが今、テーブルに置かれたマグカップからは、その熱さをこれでもかと主張しているような湯気がほかほかと立ち昇っている。
・・・なんとも子供のような嫌がらせである。
しかしこれが大した嫌がらせにならない事を、果たして本人は分かってやっているのだろうか。
何せ、熱々のコーヒーはしばらく待てば冷めるのだ。
本気でケンカをしているつもりならば、このコーヒーすら出さなければいいのに。
むしろ俺をこの部屋から追い出してしまえばいいのに。
全くもって、長野は不可解だ。
けれどこれだから、この男とは長く友人関係が続いているのだとも思う。
・・・仕方がない。
そろそろ、折れてやろうか。
「なぁ、いいかげん仲直りしようぜ、作家先生」
仕事部屋の扉を開けて、口元に笑みを浮かべながらそう投げかければ。
「・・・学者先生が謝るんだったらね」
ばつの悪そうな顔をした長野が拗ねたような声でそう答えを返してきたので、俺はつい両手を挙げて降参のポーズをしてしまった。
**********
以前第二で書いた作家アリスの二次創作を名前だけツートップに変えてみた。(笑)
そしたらあまりにハマったので驚いたって言う話です。(笑)
あ、唯一アリス=博さんのセリフは標準語に修正。
メッセージを下さった某方に捧げたい。(希望か・笑)
「剛!行くぞ~!!」
「…わーってるよ」
「ちょっと、二日酔いした坂本くんみたいな顔すんなよぉ~」
「健ちゃんったら毒舌は兄貴譲りなんだから…」
ピチピチ高校生コンビの会話にほろりと涙しつつ、快彦はそろそろ准一を起こすべく坂本家の二階へと続く階段を登った。
もはや隣とは10年以上の付き合いである。
勝手知ったる我が家とばかりにその足取りは軽やかだ。
「じゃあ行ってくるからヨシ兄~!!」
「お~しっかり勉強してこいよぉ~」
「分かってるっつーの!行ってきまーす!!」
「…行ってきます」
快彦が二階の吹き抜けから下を見下ろして、健は一階から二階の吹き抜けを見上げて、そんな会話を交わす。
ひらひらと快彦が手を振るのを見てから健と剛は玄関を出て行った。
…なんだか剛が健に引きずられているように見えたのは快彦の気のせいではないだろう。
しかし快彦はそれもいつものことと、改めて二階の准一の部屋へと向かった。
「じゅーんー朝だぞ~」
そう言いながら部屋の扉を開ければ、ベッドに腰掛けてお着替え中の准一がそこにいた。
「よしにいちゃ。おはよぉ」
「はいおはよ~♪准はちゃんと一人で起きてお支度もして偉いなぁ~」
誰かさんとは大違い、と快彦が笑えば准一がえっへんと胸を張る。
「じゅんはええこやからぜんぶじぶんでできんねん!」
「准は偉いな~でも一個だけ惜しかったな~」
「いっこ?」
「ボタンがちょーっと間違ってるな~」
「う?あ~!」
准一は自分が着ている幼稚園の制服のシャツのボタンが互い違いになっているのに気づいて慌てそれを外し始める。
が、どうにもその作業はゆっくりで、このままでは朝食の時間が無くなってしまうと快彦はそれをやってやることにした。
「准~ご飯の時間無くなっちゃうからヨシ兄ちゃんがやってやるな」
「む。おん」
「よーし、いっそげ急げ~坂本くんのご飯が准を待ってるぞ~♪」
「まぁくんのごはん~♪じゅんのごはん~♪」
快彦が妙な歌を歌い出せば、准一も楽しそうにデタラメな歌を歌い出す。
もともと人好きのする顔をした快彦は子供に好かれるたちで、あまり人懐っこい方ではない准一も出会って一日ですっかりこの細目のお兄さんに馴染んでいた。
今ではもう互いに家族も同然の扱いである。
「ほい、完成☆」
「ありがとぉ、ヨシにいちゃ」
「どういたしまして」
最後に幼稚園生ならではの紺の短パンにシャツを入れて、サスペンダーで短パンを止める。
帽子は手に持ったまま、快彦は准一を片腕で抱き上げた。
「よーし准、お待ちかねのご飯ターイム!!」
「ごはんたいむー!!」
**********
なんか中途半端だけどここまでしか出来てなかったので無理矢理収納。(笑)
「…わーってるよ」
「ちょっと、二日酔いした坂本くんみたいな顔すんなよぉ~」
「健ちゃんったら毒舌は兄貴譲りなんだから…」
ピチピチ高校生コンビの会話にほろりと涙しつつ、快彦はそろそろ准一を起こすべく坂本家の二階へと続く階段を登った。
もはや隣とは10年以上の付き合いである。
勝手知ったる我が家とばかりにその足取りは軽やかだ。
「じゃあ行ってくるからヨシ兄~!!」
「お~しっかり勉強してこいよぉ~」
「分かってるっつーの!行ってきまーす!!」
「…行ってきます」
快彦が二階の吹き抜けから下を見下ろして、健は一階から二階の吹き抜けを見上げて、そんな会話を交わす。
ひらひらと快彦が手を振るのを見てから健と剛は玄関を出て行った。
…なんだか剛が健に引きずられているように見えたのは快彦の気のせいではないだろう。
しかし快彦はそれもいつものことと、改めて二階の准一の部屋へと向かった。
「じゅーんー朝だぞ~」
そう言いながら部屋の扉を開ければ、ベッドに腰掛けてお着替え中の准一がそこにいた。
「よしにいちゃ。おはよぉ」
「はいおはよ~♪准はちゃんと一人で起きてお支度もして偉いなぁ~」
誰かさんとは大違い、と快彦が笑えば准一がえっへんと胸を張る。
「じゅんはええこやからぜんぶじぶんでできんねん!」
「准は偉いな~でも一個だけ惜しかったな~」
「いっこ?」
「ボタンがちょーっと間違ってるな~」
「う?あ~!」
准一は自分が着ている幼稚園の制服のシャツのボタンが互い違いになっているのに気づいて慌てそれを外し始める。
が、どうにもその作業はゆっくりで、このままでは朝食の時間が無くなってしまうと快彦はそれをやってやることにした。
「准~ご飯の時間無くなっちゃうからヨシ兄ちゃんがやってやるな」
「む。おん」
「よーし、いっそげ急げ~坂本くんのご飯が准を待ってるぞ~♪」
「まぁくんのごはん~♪じゅんのごはん~♪」
快彦が妙な歌を歌い出せば、准一も楽しそうにデタラメな歌を歌い出す。
もともと人好きのする顔をした快彦は子供に好かれるたちで、あまり人懐っこい方ではない准一も出会って一日ですっかりこの細目のお兄さんに馴染んでいた。
今ではもう互いに家族も同然の扱いである。
「ほい、完成☆」
「ありがとぉ、ヨシにいちゃ」
「どういたしまして」
最後に幼稚園生ならではの紺の短パンにシャツを入れて、サスペンダーで短パンを止める。
帽子は手に持ったまま、快彦は准一を片腕で抱き上げた。
「よーし准、お待ちかねのご飯ターイム!!」
「ごはんたいむー!!」
**********
なんか中途半端だけどここまでしか出来てなかったので無理矢理収納。(笑)
「健、後は任せたぞ」
「おっけー」
「じゃあ行こうか、坂本くん。電車間に合わなくなるよ」
「おう」
いってらっしゃいと手を振るブレザー姿(高校の制服である)の健に手を振って、昌行と博は駅に向かって歩き出す。
後は任せた、とはもちろん毎度の如く朝食を食べながら眠りこけると言うある意味かなり器用なことをしている剛のことである。
さすがの剛も健のハイトーンボイスには敵わないらしく、毎朝不機嫌さを露にしながらもその声でばっちり目を覚まし、学校や朝練に遅刻せずに済んでいるので文句も言えずにいる。
いっそのこと毎朝健に起してもらおうかとすら思った昌行だったが、さすがに毎朝あの大音量のハイトーンボイスを聞くのは自分的にも厳しいのでそれは思いとどまった。
まぁ実質現在も毎朝聞いているようなものではあるのだが。
「月曜の朝から不景気な顔だね、坂本くん」
「あ?」
「眉間にしわ、寄ってる」
延びてきた博の人差し指がうにっと昌行の眉間のしわを伸ばす。
するとさらにしわが増えたので博はははっと笑った。
「お前なぁー」
「はは。そんな顔してると幸せが寄り付かなくなるよ?」
「ほっとけ。憂鬱な月曜だよ、ったく」
「あらら、へそ曲げちゃって」
「うっせ。あー会社休みてぇ・・・」
「坂本くん、子供じゃないんだからさ」
微笑みを苦笑に変えて博がそう言えば、分かってるよと不機嫌な声が返ってくる。
これはいよいよもってご機嫌斜めのようだ。
「まぁ月曜が憂鬱だって言うのは分かるけどね」
「お前は学生時代からいっつも涼しい顔でそういう事言うからな」
いまいち信用ならない、と昌行が訝しげに言えば博は苦笑して酷いなぁと返す。
「坂本くんがそうへたれてるから俺がしっかりしたんじゃない」
「・・・お前さりげなく毒吐くなよ」
「え?」
なんのこと?とにっこり微笑むその笑みは黒いオーラに満ちている。
流石の昌行も学生時代からこの笑みにはどうしても逆らえなかった。
なので、
「…なんでもないです」
などとつい閉口してしまうのだ。
それを満足げに聞いてから博は自身の腕時計を見た。
「…っと、坂本くん、走らないとまずいかもよ」
「あ?…げ。しょうがねぇな…走るぞ長野!」
「合点承知!!」
自らも腕の時計で時間を確認し、博の答えを待ってから走り出す。
どうやら今日も慌ただしい一日になりそうだ。
「おっけー」
「じゃあ行こうか、坂本くん。電車間に合わなくなるよ」
「おう」
いってらっしゃいと手を振るブレザー姿(高校の制服である)の健に手を振って、昌行と博は駅に向かって歩き出す。
後は任せた、とはもちろん毎度の如く朝食を食べながら眠りこけると言うある意味かなり器用なことをしている剛のことである。
さすがの剛も健のハイトーンボイスには敵わないらしく、毎朝不機嫌さを露にしながらもその声でばっちり目を覚まし、学校や朝練に遅刻せずに済んでいるので文句も言えずにいる。
いっそのこと毎朝健に起してもらおうかとすら思った昌行だったが、さすがに毎朝あの大音量のハイトーンボイスを聞くのは自分的にも厳しいのでそれは思いとどまった。
まぁ実質現在も毎朝聞いているようなものではあるのだが。
「月曜の朝から不景気な顔だね、坂本くん」
「あ?」
「眉間にしわ、寄ってる」
延びてきた博の人差し指がうにっと昌行の眉間のしわを伸ばす。
するとさらにしわが増えたので博はははっと笑った。
「お前なぁー」
「はは。そんな顔してると幸せが寄り付かなくなるよ?」
「ほっとけ。憂鬱な月曜だよ、ったく」
「あらら、へそ曲げちゃって」
「うっせ。あー会社休みてぇ・・・」
「坂本くん、子供じゃないんだからさ」
微笑みを苦笑に変えて博がそう言えば、分かってるよと不機嫌な声が返ってくる。
これはいよいよもってご機嫌斜めのようだ。
「まぁ月曜が憂鬱だって言うのは分かるけどね」
「お前は学生時代からいっつも涼しい顔でそういう事言うからな」
いまいち信用ならない、と昌行が訝しげに言えば博は苦笑して酷いなぁと返す。
「坂本くんがそうへたれてるから俺がしっかりしたんじゃない」
「・・・お前さりげなく毒吐くなよ」
「え?」
なんのこと?とにっこり微笑むその笑みは黒いオーラに満ちている。
流石の昌行も学生時代からこの笑みにはどうしても逆らえなかった。
なので、
「…なんでもないです」
などとつい閉口してしまうのだ。
それを満足げに聞いてから博は自身の腕時計を見た。
「…っと、坂本くん、走らないとまずいかもよ」
「あ?…げ。しょうがねぇな…走るぞ長野!」
「合点承知!!」
自らも腕の時計で時間を確認し、博の答えを待ってから走り出す。
どうやら今日も慌ただしい一日になりそうだ。