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The Angel Cradle.

飛び立つこともままならない。 座り込むことすら許されない。 僕らはいつも、不安定な足場の上に。

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「健、後は任せたぞ」
「おっけー」
「じゃあ行こうか、坂本くん。電車間に合わなくなるよ」
「おう」
いってらっしゃいと手を振るブレザー姿(高校の制服である)の健に手を振って、昌行と博は駅に向かって歩き出す。
後は任せた、とはもちろん毎度の如く朝食を食べながら眠りこけると言うある意味かなり器用なことをしている剛のことである。
さすがの剛も健のハイトーンボイスには敵わないらしく、毎朝不機嫌さを露にしながらもその声でばっちり目を覚まし、学校や朝練に遅刻せずに済んでいるので文句も言えずにいる。
いっそのこと毎朝健に起してもらおうかとすら思った昌行だったが、さすがに毎朝あの大音量のハイトーンボイスを聞くのは自分的にも厳しいのでそれは思いとどまった。
まぁ実質現在も毎朝聞いているようなものではあるのだが。
「月曜の朝から不景気な顔だね、坂本くん」
「あ?」
「眉間にしわ、寄ってる」
延びてきた博の人差し指がうにっと昌行の眉間のしわを伸ばす。
するとさらにしわが増えたので博はははっと笑った。
「お前なぁー」
「はは。そんな顔してると幸せが寄り付かなくなるよ?」
「ほっとけ。憂鬱な月曜だよ、ったく」
「あらら、へそ曲げちゃって」
「うっせ。あー会社休みてぇ・・・」
「坂本くん、子供じゃないんだからさ」
微笑みを苦笑に変えて博がそう言えば、分かってるよと不機嫌な声が返ってくる。
これはいよいよもってご機嫌斜めのようだ。
「まぁ月曜が憂鬱だって言うのは分かるけどね」
「お前は学生時代からいっつも涼しい顔でそういう事言うからな」
いまいち信用ならない、と昌行が訝しげに言えば博は苦笑して酷いなぁと返す。
「坂本くんがそうへたれてるから俺がしっかりしたんじゃない」
「・・・お前さりげなく毒吐くなよ」
「え?」
なんのこと?とにっこり微笑むその笑みは黒いオーラに満ちている。
流石の昌行も学生時代からこの笑みにはどうしても逆らえなかった。
なので、
「…なんでもないです」
などとつい閉口してしまうのだ。
それを満足げに聞いてから博は自身の腕時計を見た。
「…っと、坂本くん、走らないとまずいかもよ」
「あ?…げ。しょうがねぇな…走るぞ長野!」
「合点承知!!」
自らも腕の時計で時間を確認し、博の答えを待ってから走り出す。
どうやら今日も慌ただしい一日になりそうだ。

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