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The Angel Cradle.

飛び立つこともままならない。 座り込むことすら許されない。 僕らはいつも、不安定な足場の上に。

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※注意書き
とある夏の日常とは、数年前、V6さんがまだアイドル誌に全員で出ていた頃。
(確か)明星の夏号に掲載された写真と記事内容から妄想を広げて書いた小説である。
前半のツートップ&末っ子ちゃんの話を調子よく書きあげて、続く後半に挑んでいたところ、突如としてPCが沈黙。
メーカー修理に出した結果、HDDが寿命を迎えたとのことで、データはサルベージされることなく消失。
ゆえに続きを書く気力を失ったまま現在に至る。

で、このお蔵入りしてる前半部分をTRASHブログなんだしいいよな、と言うことで中途半端なまま放り込むことにしました。(笑)
ちなみに本当にサイトを立ち上げた初期くらいに書いていたものなので今と大分文章のテンションが違う気がします。大分。(二回言った)
顕著なのは岡田さんなのね。うちの場合岡田さんの書き方で初期かどうかが分かるのね。(笑)
とりあえずかなり中途半端ではありますが親子ほのぼのをお求めの方はよろしければどうぞ。(笑)

拍手[17回]

**********

暑いな、と頭で認識するよりも早く顔を滑り落ちる汗に眉を寄せる。


八月の昼下がり、一番気温が上昇する時間帯。
その炎天下の中を彼は目指す家へとひた走って・・・もとい、ひた歩いていた。

「あっつ・・・」

拭っても拭っても噴出す汗に彼は半ば諦め顔で、しかし目に入れば酷く染みるのでやはり面倒くさそうながらもまた拭うを繰り返す。
今年の夏は在り得ない位の猛暑で、太陽から注がれるその熱線はジリジリと肌を焦がした。
それが都会の夏ともなればアスファルトの照り返しを受けてその熱を更に上昇させるわけで、それに比べればまだここは涼しい方かと彼、坂本昌行は右手に食い込んでくるピンクと白のビニール紐で編まれたネットを持ち直した。
その先に吊るされているのは先ほどまで近くの小川で冷やしておいたまん丸のスイカで、結構な重量があるそれはメンバーに食べさせてやるために坂本がわざわざ実家から持ってきたものである。
「折角冷やしといたのに着くまでに温まりそうだな、こりゃ」
次から次へと流れてくる汗をもう一度拭って少しだけ歩くスピードを速める。
瑞々しくスイカの表面に浮かんでいる水滴が、強い日差しに照らされて蒸発していきそうな気さえした。






アスファルトで舗装されていない土の道。

惜しみなく生い茂る緑。

騒がしいくらいに聞こえる蝉の鳴き声。


ここは都心から大分離れた長閑な土地・・・と言えば聞こえはいいが、要するに過疎化が進んだ田舎であった。
しかしその田舎こそ、彼らが誰にも邪魔されず涼をとるには最適の場所と言えよう。
そんなわけで奇跡的にも六人一緒に取れた二日のオフを使って、六人は珍しくも全員揃って一泊二日の小旅行に来ていた。
仲のいいスタッフの伝手で借りてもらった一晩の宿は昔ながらの藁葺き屋根の民宿。
まさに『昔ながらの』という言葉がぴったりな田舎の宿である。



そんな宿の縁側で扇風機の風に吹かれながら座布団を顎の下に引いて、腹ばいで一人まどろんでいるのは岡田だった。
いつもの男らしい精悍な顔を今ばかりはふにゃっとした微笑みに変えて、んふふと笑う。
「めっちゃ気持ちええ・・・のどかやなぁ・・・」
都会の喧騒を離れて、緑薫るこういう場所でのんびり過ごすのもたまには悪くない。
特に仕事柄毎日時間に追われて過ごしている彼らにとって、この場所では流れる時間すらゆっくりに感じられる。
それだけ心にゆとりがもてるのだ。

「えっらい馴染んでるな、お前」
そんな風に田舎の空気を満喫中、不意に苦笑交じりの優しい声が上から降ってきて岡田は顔を上げた。
庭側のほうを向けば、そこに立っていたのは見慣れた顔で。
「まぁくん。お帰り」
「お。お前にそう呼ばれんのも久しぶりだな」
「ん?そうやったっけ。なんか今すごい子供返りした気分やねん」
お祖母ちゃん家におるみたいや、とごろんと転がって仰向けになると、それはそれは気持ちよさそうにくーっと伸びをした。
「ま、俺にとっちゃお前はまだまだ子供だけどな」
などと坂本が暖かい微笑みを湛えながら、まるで父親のようなことを言ったので、なんだか可笑しくてくすくすと笑った。
「まぁくんは親父返りしてんで」
「・・・そりゃ返ってんじゃねぇだろ」
「んふふふ」
そのツッコミが自分でも微妙だと思ったのか、しきりに眉を寄せている坂本である。
と、彼が持っているスイカに気付いて岡田は身体を起こし、胡坐をかいてそれを手に取った。
「スイカ、でっかいなぁ~」
「あ?あぁ、うちの商品の中から一番いいやつ持ってきたからな」
重いぞ?と言ってからそれを完全に岡田に手渡す。
と、ずっしりと腕に来る重さに彼は思わずうっと唸ってしまった。
「重っ。むっちゃ中身詰まってそう」
「味も保証つきだぞ」
「ほならもう切ってもらう?」
「いや、どうせまだ全員集まってないんだろ?」
「おん」
坂本の言うとおり、この宿に今現在いるメンバーは彼ら二人だけである。
他のメンバーはどうやら思い思いの場所へそれぞれ足を運んでいるらしい。
全員が集まるにはもう少し時間がかかりそうだ。
「博はもうすぐ帰ってくると思う」
「あいつは何処行ったんだ?」
「隣の家。って言うても田舎やから隣の家がえらい遠いねんけど」
「隣の家?なんでだ?」
「んふふ。博が帰って来てからのお楽しみや」
「?」
本当に子供に返った笑顔で無邪気に笑う岡田に坂本は軽く首を傾げる。
と。
「いやー参った参った。本当、隣の家って遠い遠い」
「あ、帰ってきたで」
「お、長野」
「あ、坂本くんも戻ってたんだ。お帰り」
『あれ?』
「ん?」
二人が自分を見て声をそろえつつ目を丸くしたので、坂本と同じように庭側から入ってきた長野はこてっと首を傾げた。
「何?俺の顔になんかついてる?」
「いや、そうじゃなくてよ」
「博、その格好どないしたん?」
「え?あぁこれ」
長野は何を言われているのかに気づいて微笑み、着ているものを披露するように腕を広げる。
出かけには確かに洋服を着ていたはずの長野が今着ているのは白地に紺の模様が入った浴衣。
もちろん足元は黒の鼻緒の下駄である。
「お隣の家のおばあちゃんがどうしてもって言うんで断れなくてさ。着付けてもらったんだよ」
似合う?とその場でくるりと一周してみせる。
「似合ってるやん。なあ?」
「おう。いいんじゃねぇ。夏らしくて」
「そう?ありがとう♪」
二人からの素直なお褒めの言葉に長野は上機嫌でにっこりと微笑む。
が、しかし、お褒めの言葉はそこで終わっていなかった。
「似合ってて可愛いよな」
「似合ってて可愛いやんな」
「・・・ってちょっと待った!」
「あ?」
「どないしたん?」
至極普通に言われたので思わずそのままスルーしそうになった長野だが、しかしその褒め言葉の間違いに突っ込まなければと慌てて口を開く。
「二人とも、可愛いって男が男に対して言う褒め言葉じゃないよ・・・」
「あ?そうか?」
「けど可愛いで、博。なぁまぁくん」
「なあ」
二人して顔を見合わせて頷きあう。
どうやら彼ら的には本気の褒め言葉らしいので、長野は苦笑しつつもそれ以上は何も言わないで微妙ではあるけれども「ありがとう」とだけ言っておいた。
「そや、博。肝心のもんは?」
「あぁそうそう。ばっちり借りてきたよ」
「なんだ、隣の家に行ってたのはなんか借りるためだったのか?」
その坂本の疑問にそうそうと頷きつつ、長野は持っていたビニール袋を縁側に置いてがさがさとやりだす。
そして彼が取り出したものは。
「じゃ~ん♪」
「ををっ♪」
「あ・・・」
「お隣さんからカキ氷機を借りて参りましたっ」
取り出したるは家庭用カキ氷機。
袋の中には他にシロップの瓶がいくつかと練乳のチューブが入っている。
この宿には置いていないことを知った長野が隣の家にならばあると聞いて、わざわざ隣の家まで足を運んで借りてきたのだ。
「坂本くん長いことカキ氷食べてないんでしょ?こういう場所だし水も美味しいだろうから、折角だしね」
「それでわざわざ隣の家まで行ってたのか・・・なんか悪いな」
「こういう時はありがとうやろ?まぁくん」
スイカを抱えたままの岡田がそう言って笑ったので、坂本は気付いたように長野に向かって微笑む。
「・・・っと、そうだな。さんきゅ、長野」
「はは。どういたしまして」
そのやり取りに笑って答えて、長野はそうだ、と再び袋をがさがさとやりだした。
がちりがちりとシロップの瓶がぶつかり合う音が聞こえる。
「っとこれこれ。坂本くんこれお気に入りなんでしょ?」
そう言って長野が右手に持って見せたのは、青く輝くシロップが入った瓶。
カキ氷のシロップで青と言えば坂本としてはアレしか思い浮かばない。
「もしかしてブルーハワイか?って今そんなシロップ売ってんのか?」
「そうみたい。シロップはお店で買うつもりだったんだけど、これ見つけてつい見つめてたらお隣さんが譲ってくれたんだよね」
なんだか悪いことしちゃったな、と苦笑する長野に岡田がお隣さんええ人たちやんと笑う。
まさにその人の温かさは田舎ならでは、と言ったところか。
「氷はあるみたいだから、もう削ろうか?」
「ええな」
「っと、他の三人はどうしたんだ?」
「あぁ井ノ原と剛は近所の子供たち連れて山と川に行ったし、健は近所のおじさんと意気投合したみたいだからしばらく帰ってこないんじゃないかな」
「なんだ、それぞれで随分満喫してるみたいだな」
「せっかくの田舎で過ごす一日やし、たまにはこんなのもええやんな」
「そうだね。ってそういえば岡田はどこにも出かけないでいいの?」
「そうだ。お前ずっとここで寝転がってるだけなんじゃないのか?」
「ええねん俺は。ここでごろごろしてんのがめっちゃ幸せやねん。まぁくんも博もおるしな。両親独り占めしてる気分や」
本当に幸せそうな顔でにっこりと笑った岡田のそんな言葉に坂本と長野は顔を見合わせて後、思わず吹き出した。
「ぷっ・・・あはは。どうした~?今日の岡田はなんだか甘えんぼさんだなぁ」
「っぷはは!本当子供返りしてんなお前は」
「えぇやん!田舎の空気が俺を無邪気にさせんねん!」
「無邪気と言うかお前のはただの甘えたじゃないのか?」
くくくと坂本が笑ったので、照れくさそうにほんのりと頬を染めて岡田はなんとか反論する。
「もーえぇやんかぁ。最近二人とは特に一緒になることなかったから寂しかってん」
「あっ、こいつ可愛いこといいやがって」
「はは。構ってって言えば構ってやるのに。岡田最近映画の撮影でずっと忙しかったもんね」
「おん。レギュラーの撮影にも参加でけへんかったから、みんなに会うのかなり久しぶりや」
ふにゃっと本当に嬉しそうに笑う岡田に坂本と長野も顔を見合わせて柔らかい笑みを浮かべた。
と、そんな中長野はふと気づく。
ある重要なことに。
「・・・そういえば坂本くん」
「あ?」
「スイカ、冷やしといた意味ないんじゃない?」
「あっ!!」
「・・・あ。俺めっちゃ温めてるやん」
長野の指摘に自分がすっかりスイカを抱きしめて温めてしまっている事実に気付いて岡田がわはっと笑う。
坂本は自らの失態に苦笑してのち、岡田からスイカを預かった。
「…しょうがねぇな、でかい桶と氷借りて冷やしとくか」
「はは。せっかく自然の冷水で冷やしてたのに」
「俺すげぇ行き損だな、オイ」
「抱きしめといて気づかへんかった。ごめんなぁ」
「いや、気付かなかった俺が悪かった」
だからお前は悪くないよ、とぽんぽんと岡田の頭を叩く。
それから坂本は靴を脱いで縁側より室内の方へと上がった。
「ついでにカキ氷用の氷も貰ってくるな」
「うん、よろしく」
「ホンマごめんな、まぁくん」
「だぁからお前のせいじゃねぇって」
一応謝っておいた方がいいかな、と岡田が口にした謝罪に、坂本は大きく笑って今度はぺしっと彼のおでこを叩いた。
「った!」
「大したことじゃねぇんだし、謝るの禁止」
「おん。ごめ・・・」
「き・ん・し」
「あ」
「ははは」
言ってる傍から反射的に出てしまった謝罪の言葉に顔を赤くする。
坂本と長野は可笑しそうに笑って二人してわしゃわしゃと岡田の髪の毛をかき混ぜた。
「いつまでもその可愛さを失ってくれるなよ~」
「俺たちの『准一』でいてよね~v」
「うわっ!!ちょ、やめろやぁ~!!」
そうは言いながらも、岡田の顔に浮かぶのはくすぐったそうな笑顔だ。
本当に楽しそうな三人の笑い声が辺りに響く。

蝉がまるでそれを笑うように、ジージーと鳴き声を上げた。
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