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The Angel Cradle.

飛び立つこともままならない。 座り込むことすら許されない。 僕らはいつも、不安定な足場の上に。

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「あら?係長、そちらは?」
やがて井上の存在に気づいたらしい小宮山が、いかにも興味津々です!という顔をして加納にそう聞いた。
どうやら加納の隣に大人しく納まっている井上を見て、加納の知り合いと判断したらしい。
ここは自分から名乗り出るべきだろうと口を開きかけた井上だが、しかし。
それを実行する前に小宮山が隣の村瀬の肩をバシバシと叩いてやたらと嬉しそうに言った。
「やだ、ちょっと主任さん、イケメンよイケメン!」
「いたっ!ちょ、痛い!!痛いよ小宮山くん!!」
身を捩じらせながらの村瀬のそんな抗議は当然の如く通用するはずもなく。
目をきらきらと輝かせた小宮山は妙に高い声になって加納に聞いた。
「係長のお知り合いの方ですか?」
「ううん。浅輪くんのお友達。井上薫くん」
「あ、井上です、初めまして」
話の流れとは言え、結局加納に紹介されてしまった井上は、妙な展開だなと思いつつ、座礼では失礼だろうと律儀に立ち上がり一礼する。
「青年のお友達!初めまして、小宮山ですぅ~」
両手を胸の前で併せたポーズ、プラス明らかなる猫なで声に、ぼそりと呟いたのは隣の村瀬である。
「いっそ見事ほどの猫被りっぷりだな・・・」
「な・に・か・言いました?」
「うっ!・・・いや、別に・・・」
笑顔のまま詰め寄る小宮山に対し、引きつった顔で後退る村瀬。
まさに力関係の象徴だな、と井上は一人妙な感心をした。
「あはあは。薫くん、小宮山さんには気をつけろよ~」
「ちょっと青年まで!」
相変わらずコーヒーの準備をしながらのんきに笑う浅輪へ、小宮山が怒りの矛先を変えたその時。
「はいはいはいはい、ごめんなさいよーっと!」
「只今戻りましたー」
二人の男が連れ立って室内へと入ってきた。

**********

まさかの一年近くぶりの続編。(笑)
9係新クールが決まったので小出しにしてみました。
しかし薫くんはドラマ中ではイケメンの扱いをされてないような気がするんだがイケメン設定にして良かったのだろうかとふと。(笑)

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三人掛けのソファは思いのほか座り心地のいい硬さで、すっと体に馴染んだ。
しかしながら予想外の相手と同席…それも横並びで座ることになって、井上はなんとなく居心地の悪い思いで居た。
二種類のコーヒーを準備しなくてはいけなくなった浅輪はまだ当分こちらに来てくれそうにはない。
手持ち無沙汰にちらりと隣の加納を盗み見ると、彼はテーブルの上に広げた書類を何枚か手にとって目を走らせている。
捜査資料か何かだろうか、と井上が思っていると、書類から視線を外さないままで加納があっさりと口にした。
「捜査資料じゃなくて、料理のレシピ」
…やはりこの男、ただものではない。
「料理、されるんですか?」
とりあえず場つなぎ的にそう話を振ってみると、うんと頷いた加納は持っていたレシピを井上へと差し出してきた。
どれどれとレシピを見てみれば、そこに書かれていたのは本格的なスパイスカレーのレシピで。
随分凝ったものを作るんだな、と材料の部分に並べられたスパイスを目で追っていたら、二人の会話に気づいたらしい浅輪がコーヒーを作る手を止めないままで笑って言った。
「薫くん、係長はここで良く料理作るんだよ」
「え?ここで?」
「だからほら、うちの部屋は調理器具だらけでしょ」
「確かに、そう言われてみると・・・」
違和感は確かにあった。
9係の部屋は見かけは普通のオフィスなのだが、よくよく見ると棚の上やそこかしこに鍋やらなにやらの調理器具が所狭しと積んであるのだ。
捜査一課の部屋にはおよそ不釣合いな品々は明らかに使い込まれた感じが出ており、誰かが定期的に使用していることは予想できた。
が、まさかそれが9係係長自らが使用しているものだとは。
「料理お好きなんですか?」
「まぁね」
ともすれば鼻歌でも歌い出しそうな調子で返してくる加納に、変わった人だなと井上が頬を緩めたら、それを目ざとく見つけたらしい浅輪がイタズラな笑みになって言う。
「係長、薫くんに変な人だなって笑われてますよ」
「えっ?!」
「変?」
「いや!!別にそんなことは…!」
「料理が趣味ってそんなに変?」
きょとんとした顔で緩く首を傾げて聞いてくる加納に、井上は大慌てでブンブンと両手を振り、そんなことないです!!と繰り返した。
キャビネットの向こうでは浅輪がやたらと楽しそうにあはあはと笑っている。
…なんで笑ってんすかあんたは。
喉元まで出かかった抗議を飲み込んで、井上が苦虫を噛んだ様な顔をしていると。
「戻りました」
「あーもうくったくた!」
対照的な声がそう響いて、室内には一組の男女が入ってきた。
「あ、お疲れっす」
浅輪が気さくにそう声をかければ、入ってきた女の方がぷりぷりと怒って言う。
「もう!主任さんのせいで結局無駄足踏まされちゃった」
「小宮山くん、君ねぇ・・・」
「あ、コーヒー!青年、私の分も入れてくれる?」
「はいはい」
「・・・・・」
完全に男の言葉をスルーした女は常備してあるマイカップを取って浅輪にコーヒーの注文をする。
片や男の方はと言えば、渋い顔をしながらも抗議をするのは諦めたらしく、ただため息を一つついた。
見るに浅輪の同僚なのだろうが、主任と呼ばれた彼と、彼を無視した彼女はなんとも不思議な力関係にあるらしい。
井上がそんなことを思っていたら、横で加納がこっそりと説明してくれた。
「女性の方が小宮山さんで、男性の方が村瀬くん。階級は村瀬くんの方が上だけど、力関係は小宮山くんの方が上かな」
「はぁ」
なんかそんな感じですよね、という言葉は流石に飲み込んだ井上だった。

**********

キャラ増量でますます出口が見えなくなりました。(をい)
でも小宮山さんは動かしやすくて書くのが楽しそう♪
浅輪くんの存在感がイマイチなのでなんとかしたいところ。(笑)

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井上が何も教えられないまま浅輪の後をついて行くと、たどり着いたのは浅輪が所属する9係の部屋だった。
どうやら『飲んで行かない?』と言う問いかけには、頭に『9係で』がついていたらしい。
ガラスの自動ドアと言う、一課の部屋としては珍しいタイプの入り口をくぐると、そこにあったのはごく普通のオフィスだった。
彼の同僚たちはどうやら皆出払っているらしく、そう広くはないがきちんと整理された室内は閑散としている。
浅輪曰く皆捜査に赴いているそうで、かく言う彼自身もついさっきまで捜査に出ていて、報告に一旦戻った所で井上と出会ったのだとか。
「奥に座ってて」
「あ、はい」
浅輪に促されるまま、井上は部屋の奥にあるソファの方へと近づこうとする。
と。
「お客さん?」
「え?」
思わぬ問い掛けに井上はつい声を上げた。
入口からはキャビネットの影になって見えなかったが、そこには一人の先客がいたのだ。
『飄々とした顔の五十代男性。多分、結構なくせ者』
つい反射神経的なもの(あるいは職業病とも言うべきか)でそう分析してから、井上が一体誰だろうかと口を開きかけると、それよりも先にキャビネット越しに男に気づいた浅輪が声を上げた。
「あれ?係長?」
「浅輪くん」
「居たんですか」
「うん」
こくりと頷いて返す、独特のテンポを持ったこの人物はどうやら浅輪の上司であるらしい。
係長と呼ばれた男は井上を一瞥してから浅輪に聞いた。
「君のお客さん?」
「あ、はい。玄関ですっごい久しぶりに会ったんですよ。で、せっかくだからお茶に誘ったんです。あ、薫くん、こちらは俺の上司で9係係長の…」
「加納倫太郎です。こんにちは」
座っていたソファから立ち上がり、浅輪が紹介するよりも早く自ら名乗った相手に、井上はさりげなく佇まいを直して自らも名乗り返す。
「警備部警護課第4係の井上薫です」
「警護…って言う事はSPさん?」
「あ、はい。そうです」
「そっか。初めまして。よろしく」
やはり裏の読めない飄々とした顔の浅輪の上司…加納は、小さく笑みを浮かべてそう言うと視線を井上から浅輪に移して注文を口にした。
「浅輪くん、僕にもコーヒーくれる?」
「あ、はい。エスプレッソと普通の、どっちにします?」
「君たちはエスプレッソ?」
「はい」
「じゃあ僕は普通の」
「はいはい」
なにやら天邪鬼のような注文に対し、苦笑いを浮かべて答える浅輪。
雰囲気からして、どうやらそんなやり取りは彼らの日常であるらしい。
浅輪は加納の注文を請けると、キャビネットの上に置いてあるコーヒーメーカーと、その隣の機械…多分エスプレッソマシーンだと思われる…のセッティングにかかった。
彼がおいしいエスプレッソを、と言ったのはどうやらこの事らしい。
まさかエスプレッソマシーンを警視庁で支給しているはずもないので、推測するに9係の誰かが自費で買って持ち込んだものなのだろうが、慣れた手つきでそれをセッティングするのを見る限り、持ち込んだのは浅輪ではなかろうか。
そんな事を考えながら浅輪の作業を立ったまま見守っていた井上は、不意に視線を感じてその元をたどった。
と、すぐにぱちりと合った加納の目は笑みの形に細められていて。
「どうぞ」
「え?」
「立ってないで、座ったら?」
「あ…はい、失礼します!」
その笑みの理由はぼけっと突っ立っていた自分だったことに気づいて、井上は慌てて加納の隣へと腰掛けた。


***************

オチが見えない・・・(笑)
とりあえず係長を書くのが楽しくてしょうがない。

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その日、井上薫は警視庁前で珍しい人物と顔を合わせた。

「…あ」
「あれ?あっ!」

声をかける前にどちらからともなくぱちりと合った視線。
それでこちらを認識したらしい相手は、途端にぱあっと笑顔の花を咲かせた。
それがあまりに見事だったもので、井上はついつられ笑いをしつつ、久しぶりに見た笑顔の主の名を呼んだ。
「浅輪さん」
「薫くん、すごい久しぶり!」
「お久しぶりです」
答えて返して、ふと『薫くん』と自分を呼ぶ人間は多分この人くらいだよなぁ、なんて思う。
井上はなんとなく緩んだ口元をそのままに、元来細い目をさらに細めながらやたらと嬉しそうに駆け寄ってくる相手を迎えた。
ついその様になつっこい犬を連想してしまいながら。
「ん?なに?何笑ってんの?」
「いや…なんでもないっす。浅輪さんとここで会うなんて珍しいっすね」
「そうそう、ほんとだよなぁ」
井上がさりげなくすり替えた話題にうんうんと大げさ過ぎるくらいに大きく頷く、このいかにも人のよさそうな顔をした青年は浅輪直樹と言って、曲者揃いと噂される警視庁捜査一課9係に所属する刑事だった。
頭の回転が良く、運動神経も抜群の彼は、所轄署から警視庁の花形と言われる捜査一課に転属となった期待の新人で、捜査一課で最も高い検挙率を誇る9係において、その期待を裏切らないだけの活躍をしているらしい事は井上の耳にも入ってきている。
対する井上は警視庁警備部警護課第4係機動警護班所属の隊員である。
いわゆるSP、セキュリティポリスと呼ばれる存在で、要人警護・対人警護を主な仕事としている。
故に同じ警視庁勤務でも仕事内容や仕事場所が全く異なる為、二人がこうやって警視庁前で顔を合わせる事は本当に滅多に無いことだった。
そもそも彼らが知り合ったのも職場ではなく、浅輪の彼女(本人談)が働くケーキショップだったりするくらいだ。
数ヶ月前、合コンを繰り返していた(いや、今でも繰り返しているが)井上が、相手の子が好きだと言うケーキを手土産にしようと足を運んだケーキショップが偶然にも浅輪の彼女(しつこいようだが本人談)が働く店だったのだ。
その日たまたま店にいた浅輪に何故かケーキの説明をされつつ、なんとなく話が盛り上がったので成り行きで自己紹介をしたところ、お互い同じ職場で働く人間と知りさらに意気投合。
その場で携帯番号とメルアドを交換して親睦を深め、そして現在に至るわけである。
「あ、薫くん、今ちょっとだけ時間ある?」
「え?」
急な浅輪の問いかけに、ちらりと見やった腕時計が示していた時刻は昼の二時ちょっと前。
井上はつい今し方遅めのランチタイムから戻って来た所で、多少の時間であればまだ休憩時間の範疇として認められないこともない。
なので素直に頷いて返した。
「少しくらいなら無くもないっすよ」
「本当に?じゃあさ、久しぶりに会ったことだしコーヒーでも飲んで行かない?」
「はい…って、え?飲んで行かない?」
さらりと言われた言葉に井上は一瞬聞き流してしまいそうになったが、『飲みに行かない?』ではなく『飲んで行かない?』とは一体どういう事なのか。
そんな疑問に対し、何故かにやりとした笑いを浮かべた浅輪は。
「おいしいエスプレッソ淹れるからさ♪」
と、井上に答えを教えないまま、その身柄を警視庁内へと連行…もとい、連れて行った。

**********

実は薫ちゃんの方が年下で階級が上って言う事実ゆえに、二人の出会いを職場外にしてみた9係+SP捏造設定しまくり小説。(笑)
どうしても書いてみたかったこの設定、まったり続きます。

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*AVIARY*

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